• 松脂の利用は、暮らしを発展させることのはじまりであった。
    今でこそ昼夜かまわず明るさを得られる時代となったが、それは暗闇を照らそうと、古代から日々の暮らしの経験の中で工夫と改善を繰り返してきた結果なのである。
    中でも脂を多く含んだ松は火持ちが良いことから、数千年もの間、人びとの生活を支えてきた。灯りの歴史を紡いできた原始的な素材に回帰して制作を行ったこの作品は、暮らしと灯りの距離が、再び近く感じられるような燈となることを目指している。

  • 火の製作が簡単ではなかった頃、人びとは燃えやすい素材の発見やひとつの火を分け合ったり継ぎ足すことで、明るさを保つ方法を見出してきた。松脂は燃えると柔らかくなる性質があり、火が小さくなると継いで灯りを長くともし続けられることから、「継松(ツイマツ)」という言葉が生まれたといわれている。

  • size : W105×D105×H190 / W120×D120×H130 / W110×D65×H170

  • size : W120×D130×H205 / W105×D105×H320 / W105×D105×H180

  • 松脂は古来から燃料や医薬品としても使用され、暮らし支えてきた。
    硝子質で美しく光りを透過させる琥珀色は、用途だけではなく素材そのものとしても魅了される。

  • 土台となる素材には粘土と松の材木を使用。
    粘土は素材感が最も良く表れる野焼きで制作を行い、松は節や断面の表情を活かした。

  • 粘土の水分が十分に抜けるまで乾燥させ、1日かけてゆっくりと灰で燻す。熱の伝わり具合によって有機的な斑が生まれる。

  • 松脂の塊を細かく砕き、火で燃やして溶かす。はじめは黄色い硝子質だったものが、熱を与え続けることで徐々に柔らかくなり赤みを帯びてくる。

  • 松脂は冷えるとすぐに固まる為、液体になった瞬間に土台へ流し込む。外気との温度差によって生まれる皹や、液体が固まる過程で含まれた気泡は、どれも意図したものではない自然の素材がつくり出す魅力がある。

  • 古代から暮らしに根付いてきた旧い素材を使い、現代の暮らしの中に溶け込む新しい灯りの提案。

  • 古代から暮らしに根付いてきた旧い素材を使い、現代の暮らしの中に溶け込む新しい灯りの提案。

続松 - ツイマツ -
瀧井 絢子