日本の地域にあふれる、風土色豊かな伝承芸能。ふるさとの記憶でもある芸能が失くならないように、そして時代が変わっていくからこそ、「新しいおもしろさ」として感じていけるように。
伝承芸能を単に保存(archive)するだけではなく演目を深掘りしプラスの魅力として再発見する。
新潟県魚沼市中家(ちゅうか)集落の伝承芸能のリブランディング・プロジェクトです。
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新潟県魚沼市中家(ちゅうか)集落は、魚沼市の南東に横長に位置する集落です。
中家民芸保存会は、今から56年前の1962(昭和37)年、民芸保存会として発足。その以前より、祭などの場で手踊りや歌舞伎などを行うため、また冬場の貴重な娯楽として機能していた民芸を掘り起こし、現在に伝え、芸能の未来への継承すること、また活動を通じた世代間交流を図っています。
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新潟県 魚沼市 中家(ちゅうか)集落では保存会により
伝承芸能の三味線・太鼓・尺八などの演奏に合わせた唄と踊りの演目が守られています。
メンバーとして活動する中で見えてきた問題点に、今回は取り組みの焦点を当てました。
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問題点 ① 地域の伝承芸能は、これまで人から人へ伝えてきて記録があまり残されていない ため、時代の変化とともに、本来の由来や意味していた情景などがわからない。ただの音、ただの踊りの型だけが伝えられてしまっている部分がある。
問題点 ② 少子高齢化によって受け継ぐ若手の減少、本来の意味や情景などを知るベテランのメンバーが高齢かによって、芸自体の保存が非常に急務である。
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新潟県魚沼市中家集落の「中家民芸保存会」に伝わる演目の魅力の再発見(=リブランディング)」を行いました。
地域独自の演目のポイントを捉え直し、そのポイントを図解などで紹介。これによりアーカイブとして残すとともに、「豊かな風土に育まれたオリジナリティー溢れる演目」をプラスの魅力として発信していきます。
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内容は「冊子」とスマホ対応の「webサイト」に編集。これにより老若男女問わず、コンテンツに触れるきっかけの創出を図ります。
調査方法:地域の方へのヒアリング/アンケート調査/地域資料・文献など。
内容 :(1) 中家民芸保存会の活動概要、活動写真
(2) 地域独自演目8種の解説…唄の歌詞とその意訳、演目の背景や意味、唄の情景、踊りのポイントなど)
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①冊子形式
誰でも気軽に手に取れる冊子形式は、どの年代でも読みやすい大きめの文字です。
A4版 / 本文82ページ/ フルカラー
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それぞれの演目の歌詞をまとめ、その際に意味がわかるよう現代でも通じる言葉を添えています。
例えば演目解説「花笠追分」のページでは、下記の要素をまとめています。
・演目のポイント
・「追分」の言葉の意味
・歌詞とその意訳
・情景のイラスト
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冊子後半は、活動の様子がわかる写真写真を行事ごとにまとめて紹介。
舞台の裏側や練習風景など、会の空気感が伝わる内容です。
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フルカラーの冊子は、保存会の衣装の美しさなどもよくわかります。
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②web形式
スマホ対応のウェブサイトで見れるようにしました。
演目のポイントは、ダウンロードして印刷ができるようにしてあるので、
誰でも手元に小冊子として持つことができます。
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ウェブでは演目の映像を掲載しているので、唄の調子や踊りのリズムを、動画で確認することもできます。
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今回の2つの形で手にとってもらうきっかけができたことで、若手には芸の魅力の理解や興味のフックになるよう、そしてベテランのメンバーにとっては芸を守ってきたという誇りを改めて感じてもらい、これからのモチベーションにしてもらいたいと思っています。
今後はこの2つをきっかけに、芸の魅力の発信と普及につなげていきます。
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