そうぞう玩具「ALO」は、創造を楽しみ、想像力を育む遊びです。発想は、子どもの頃に身近な素材を使って遊んだ経験からです。私は、遊びの中で自分だけのアイデアの素材をストックしていたことに、大人になって気づきました。この経験から、ストックを増やすのに、子どもの時期の遊びが役に立っていると考え、子どもが自ら想像力を育んで、知識を広げるための遊びを提案します。
今、世の中に完成した玩具はたくさん揃っています。
でも、完成していない、自分でつくりあげる、玩具があってもいいのではないでしょうか?
子どもの敏感期や発達には段階があり、遊びを提案するには、子どもが今、何に敏感で何を知りたいのかを汲み取ることが重要になります。対象とするのは、手に触れる触感に敏感になり本能的な学習意欲が現れる3〜6歳の子どもと、それを応用してさらに知識を吸収していく6〜12歳の子どもです。
【遊びの素材】 スチレンペーパー/ストロー/リボンタイ
○この素材を選んだ理由
- 素材同士を組み合わせることで、感覚が敏感になる時期の子どもの手の触感を刺激できる。
- 身近で手に入れやすい素材なので、保護者が気軽に買い足しやすい。
- 扱いやすい素材なので、カスタマイズして遊び続けられる。
【パッケージの素材】 カバー・箱・内紙ごとに触感の異なる紙
手から得る感覚の情報を意識して、触感と開閉動作を楽しめるように考慮しました。すこしザラっとした質感のスライドするカバー、布を貼った蓋つきの箱、内紙には表面がザラザラ裏面がツルツルのハトロン紙を使用しています。
ロゴマークの「ALO」はラテン語で「育む、養う」の意味です。子どもが自ら想像力を育んで、自分を成長させてほしいという思いがあります。そして、子どもたちに親しみをもってもらえるように、ロゴマークをキャラクターにしました。子どもたちと同様にアロくんも好奇心が旺盛です。
鬼ごっこ、電車ごっこ、お母さんごっこ。子どものころに夢中になったごっこ遊びのように、子どもの想像は無限に広がっていきます。子どもは日常を遊びに取り入れて、組み合わせて、新しいカタチを創造します。ALOは好奇心いっぱいの子どもの想像力を育むために、身近な素材を使った「そうぞう玩具」を提案します。
1 | ようなのような
【素材】 スチレンペーパー
このカタチは何にみえますか? 雲のような、花のようなカタチでしょうか? 「ようなのような」は、組み合わせたり、並べたりすると、新しいカタチにみえてきます。五感をはじめとした感覚が最も敏感になる3〜6歳の子どものための遊びです。この時期の子どもは、手に触れる触感に敏感になり本能的な学習意欲が現れます。素材はスチレンペーパーです。裏表で色が違い、軽くて、持った時と組み合わせた時の音や触感が面白いです。粗雑に扱うと割れてしまいますが、どの加減で壊れるという情報を得る学習の機会になります。割れてしまった時は、同梱の型紙を大人に渡してパーツを作り足したり、子どもの好きなカタチを作り足して、カスタマイズして遊び続けられます。
1 | ようなのような
触感と開閉動作を楽しめるように、布を貼った蓋つきの箱に、すこしザラっとした質感のスライドするカバーをつけました。
2 | くみくみスティック
【素材】 ストロー、リボンタイ
ものにはそれぞれの使い方があります。ストローは何をするものでしょうか? ストローは飲み物を飲むものです。でも、それだけでしょうか? 「くみくみスティック」は、感覚から得た情報を応用して、さらに知識を吸収していく6〜12歳の子どものための遊びです。ストローをつなげたり、切ってサイズを変えたりしながら、いろんなカタチをつくります。つなげるための素材はリボンタイです。リボンタイは、ラッピング袋の口を留めるワイヤー入りのリボンです。曲がるストローを加えたり、太さの違うストローをつなげる方法を考えたり、カスタマイズして遊び続けられます。
2 | くみくみスティック
パッケージの素材は、ようなのようなと同じです。どちらも内紙には表面がザラザラ裏面がツルツルのハトロン紙を使用しました。
実際に遊んでもらいました!
泉大津市立条南小学校3年生の3クラス(102名)の子どもを対象に図工の授業をしました。素材は、ストローとリボンタイのみ。この2つの素材を使って、新しいカタチを創造します。
手元に配られた時に好奇心をもってもらえるように、ストローとリボンタイは中身の見える透明のパックに入れました。1人分がストロー90本、リボンタイ50本です。90分の授業では適度な量でした。使いきれなかった素材は、家でも楽しんでもらえるように持ち帰ってもらいました。また、素材の扱い方や作品事例を紹介したチラシを用意しました。
授業の時間は各クラス2時限(90分)のため、創作の時間を楽しんでもらいたいので授業内容を詰め込みすぎないように考慮しました。対象が8歳の児童であることから、まねる以上の創造性を楽しめるように、到達目標をオリジナル作品として、自分なりの遊び方の発見につながる指導を試みました。
1 | 遊びの心をもってみてみよう
ものにはそれぞれの使い方がありますが、遊びの心をもってみると新しい発見があります。どのような新しい発見があるのか、遊びの心が伝わる現代アートをプロジェクターで紹介します。
2 | 素材を手にとって確かめよう
まずは視覚と触覚で素材を確認します。
3 | 素材の扱いに慣れよう
素材の扱い方や作品事例を伝えます。
4 | 自分なりの遊び方を見つけよう
素材を組み合わせて自分なりの新しいカタチを創造します。作品名をつけて発見の成果を表現します。
【ねらい】目的に到達する力を育む/何を表現したのかを明確にする
5 | 新しいアイデアを周囲に伝えよう
どこを工夫したのか、どのようなアイデアを発見したのか、情報を周囲と交換します。
【ねらい】伝える力を育む/新しいアイデアを知る
最初はチラシに載っている作品事例をまねる子どもたち。素材の扱いに慣れてくると、どんどん想像が膨らんで自分なりの遊びを見つけ出しました。真っ直ぐなストローの探求に取り組んだ後、曲がるストローを配布しました。新しい素材との組み合わせが始まると、自分が発見した新しいアイデアを周囲に伝える子どもが出てきました。
子どもたちの作品の一例
○子どもたちから
【アンケート】 気に入ってるところはどこですか?
ストローだけで遊べる/いろいろつくれる/リボンタイがつかいやすい/はめるところ/ぜんぶ/むずかしかったのに作れたこと/うまくつくれたところ
○担任の先生から
【アンケート】 子どもたちの様子はどうでしたか?
- 普段元気でなかなか集中できない子どもたちも多い中、シーンとする時間があり、みんな夢中になって活動を楽しんでいました。単純な作業のくり返しなので、だれでもできる、応用がきくので、得意な子も退屈しないところがよかったと思います。家ですると言って材料をうれしそうに持って帰りました。
- とても集中して取り組んでいました。自分なりの作品ができて良かったです。「まだ時間が欲しい!」と言っている様子を見て「もっとやりたい姿」になる授業展開が素晴らしいと感じました。
○今回の経験から
作品事例をまねて知識を吸収した後、子どもたちはそれぞれの遊び方を探求し始めました。ストローとリボンタイが扱いやすい素材なので、自分の考えたものを表現する達成感を得やすいと実感しました。