日本独自の文化である「銭湯」
様々な文化、芸能がある文化の中でも、大衆文化の銭湯は保護されにくく、年々数を減らしている。
だが、建築様式やペンキ絵、欄間飾りなどの高い文化性を持っており、
且つ開放的な雰囲気の中でリラックスできるなど、体験型の文化も存在している。
銭湯の「現状」
2017年の段階で、3900軒にまで減少。
後継者不足や、天災による被災から復旧できないなどの理由が挙げられる。
対して、インバウンド観光客向けの日本文化体験や、
若年層からの銭湯経営者が生まれるなど、新しい潮流も生まれている。
銭湯文化継承のための提案
可視化できる物的な特徴、「モノ」的な文化と
可視化できない体験的な特徴、「コト」的な文化、それぞれを提案する。
「モノ」的な文化については、銭湯実地レポート「銭湯考現学採集」にまとめた。
「コト」的な文化については、跡地の空間提案として文化施設「ゆのま」で後世に伝えていく。
「銭湯考現学採集」について
自分自身が客として銭湯を訪れ、そこから観察できたものをまとめている。
あくまでも「日常の風景」をまとめるため、事前アポなどは原則行っていない。
※「考現学」は今和次郎が提唱した学問であるが、
今回等身大の目線で銭湯を捉えるうえで「考現学」としてまとめた。
採集数と比較対象
東京、京都、神奈川、長野の銭湯を訪問。
それぞれ特徴的な項目についてチェックをつけ、記録をする。
本の造りについて
本書は、左右対称の銭湯建築や浴室のタイルをイメージして、正方形で製本。
中面のタイル張りモチーフの柄についても、日本独自文化であることから、日本古来の色を配色。
それぞれの特徴については、レポートの後半に、定量評価で記載。
数や形状などの特徴を捉えることで、地域性などを見出す。
「ゆのま」について
銭湯文化から感じられることを体験を再構築し、
この施設で楽しむことができる新たな体験として、施設内の各空間に配置した。
そしてそれぞれの空間の中心には、お風呂(湯の間)があるように配置を行う。
建築物概要①
建築予定地は杉並区浜田山の昔銭湯のあった跡地。
中心の湯の間は、どの空間とも敷居一枚で接した施設のコア。
スタンディングバー・カフェを設けて、コミュニティの形成を図ることで
銭湯の社交場感を新たに生み出す。
建築物概要②
一つの屋根の下で様々な人が関わるよう作られた大きな三角屋根は、銭湯の破風屋根をイメージ。
書斎や図書スペースでは、ちょっとした贅沢な時間を過ごせ、銭湯の「日常の中の非日常感」を生み出す。
空間活用方法
この施設の特徴は、引き戸、襖によって、フレキシブルに空間を生み出せる点である。
浴室とは必ず接しているため、それぞれのフロアと浴室を一つの空間にすることができる。
また全ての仕切りを解放することで、「ゆのま」全体が、浴室とつながった一つの大きな空間になる。