沖縄在住の制作者が、太陽が海に美しく光り輝いている景色に感動して、ふと、この美しさを器に投影することはできないかと思ったことからこの卒業制作が始まった。どこまでも青く美しい沖縄の海からインスピレーションを受けた器を沖縄独特の素材や技法で制作。
この器を手にした人が、旅を終えて自宅に戻ったときにそれを手にしてほっと一息ついて旅の回想をしたり、この器から家族や家に招いた友人との会話が弾む一つのアイテムになってくれたら、という思いからこの器ができあがった。
また、手作りの器で食事を楽しむ時に、ちょっぴり優雅な気分になってもらえればという思いもこめられている。
リサーチでは、可能な限り実際にいろいろな時間帯に海へ行き、歩いて素材を探し集めてきたり、写真撮影などを行った。そして、そこで感じたことや、見た風景をモチーフに沖縄ならではの素材や技法を用いて制作を行った。
テーマとなった島はヒーリグスポットが点在する静かな島、浜比嘉島。
ヒーリングパワーをたくさん秘めた浜比嘉島で採取した土と沖縄で作られたサトウキビの灰で作られたオリジナル釉薬を作った。落ち着いた自然に近い茶系でほっとする色に仕上がった。
浜比嘉島に行き、海から採ってきた砂。一度目は三十分かけてこの島に行くも満潮のため採取できず。二度目は下調べをして干潮時に行き、砂の採取に成功。持ち帰った砂は海水を取り除き、すいひして、ミルにかける。さとうきびを絞り出したあとのカス、くりんかーと呼ばれるものを燃やした灰を水と混ぜ、調合を繰り返し色合いを見る作業を行う。
テーマとなった、木綿原ビーチは地元民の間で人気のビーチ。浜にはたくさんのサンゴが辿り着いている。朝行くと誰もいない静かでのんびりとしたこのビーチで、白いサンゴをイメージしてできたこの器で、贅沢な朝食を味わってもらいたいという思いから制作。
海にたくさん落ちているサンゴを砕いて土に混ぜた。白い釉薬はマット釉を使用。土を何種類か試して、白が浮きすぎず、一番素朴な仕上がりになる土を選んだ。
天気が良い日の午後は太陽が光って見える海の波が銀色に照らし出されて眩しいくらいにゆらゆらときらめいている嘉手納ビーチ。真っ青な海にきらめく太陽の光からインスピレーションを受けて作り上げた一皿。
きらめきをどのようにきらめきを表現するか試行錯誤するのに数週間も費やしてしまった。いろいろ試したのち、水分を飛ばした白化粧で乾燥する前の成形された器にべたべたと模様をつけ、るりで青色の海を表現することにした。青色を一層青くするために沖縄の白土をベースに作った。
狭い洞窟の入口から太陽光線が差し込み、それが海底に反射し、水面が青く輝く現象が見られる不思議な洞窟。暗闇と一筋の太陽の光がこの上ない美しい青色を引き出す。恩納村の青い洞窟はこの美しさから世界中のダイバーの間で有名な場所。そんな青い洞窟の美しい青色のグラデーションを器に投影した作品。
いくつかの濃い青と薄い青の釉薬をテストしてできたのが青い洞窟。最終的には沖縄の赤土を使うことによってより深い青をるり釉を使用し、トルコ釉の濃度を変えて濃くすることで美しいグラデーションを再現した。
一度は絵葉書で見たことがあるような、目が覚めるような透き通った水色の海からインスピレーションを受けた一枚。この器は自然がいっぱい残る読谷村の渡具知ビーチをテーマに作られた。
あえて白い土を使わず、沖縄の赤土を利用することで、釉薬の青っぽさの中にも少し素朴さを作り上げることで、天然な手付かずの海を表現した。
街灯も何もないニライビーチに夜行くとそこにあるのは打ち返す波音と、美しい星空だけ。そこに静かに座ってただ空を見上げているとこんなにも頻繁に流れ星が落ちるのかと驚く。
大切な人と一緒に星を眺めながらこのフリーカップで泡盛を堪能してもらいたいという思いで作った。
たまたまできたこの鉄分の斑点に興味が湧き、このテストピースからこの器をイメージして作った。実際は偶然にできたもので、再現は難しいので最終的には金色を上から吹き付けることで可能にした。
数々のテストを重ねて出来上がった海からできた6つの器たち。一部のテストピースを紹介する。試行錯誤を重ねたものや偶然できたものから作られたものまで様々。半年間の卒制の成果の裏ではたくさんの実験を行ったことが今後の活動にも繋がると思う。