風が通り多様性のある森は人を元気にさせる力がある。かつて子供たちの遊び場としてにぎわった里山は、薪炭林としての役割を失い放置され人とのつながりが希薄になっている。地域に残され、埋もれつつある中世の山城。悠久の歴史に思いをはせて、残された目の前にある資源を見直し、未来にバトンをつなげていく。五感を磨いて歩き、学び楽しめる里山へ。心のふるさと一重山の再生計画を提案する。
千曲市は長野県の北部に位置し、一重山は1000m級の山に囲まれた市の中心部、しなの鉄道屋代駅のすぐ裏にある。平成5~6年に発掘調査が行われ平成7年に「屋代城跡範囲確認調査報告書」が市の教育委員会から発行された。
屋代城は、標高456m、比高差は90m、面積は14ha。削平地(曲輪)が12個確認され、県内でもかなり規模が大きい。一部は寺や墓地、神社に利用されているが、施設の老朽化が進んでいる。石垣や堀切は藪に覆われわかりずらく、かつての眺望は望めない。城跡という中世の歴史遺産をまちの観光資源として活かせていない。
半径1km以内に、東日本最大級の森将軍塚古墳、県立歴史館、条里制田んぼなどがある。屋代城を整備することで、古代遺跡に中世の遺構が加わり、古代から中世、現代にいたる2000年の歴史を体感できる場所になる。今回、教育委員会の指導を受け、史跡の改変をしないことを前提に、史跡の復元イメージを計画とし4つのエリアに分けて計画をたてた。
案内エリアでは北側の入口に城跡やハイキングコースの案内板を設置し、城跡にふさわしい門をつくる。見晴らしエリアでは、曲輪周辺の樹木を択伐や除伐を行い、年数をかけてかつての見晴らしを生み出す。森林浴エリアでは既存の木を活かしながら、史跡がわかりやすいハイキングコースの設置、伐採木の市民の活用などを検討する。子供が遊べる広場や休憩場所をつくる。史跡体験保全エリアでは中世山城をイメージした高井楼や狼煙台をつくり、サクラを植樹し眺望伐採を行う。埋蔵物の調査を行い、埋もれている石垣の調査・復元をする。
現在かつての薪炭林のクヌギやコナラが大木に育っている。10~20年かけて択伐を行い、放置林を多様性のある森へと育成し、豊かな生物の出現や森林の公共的機能の向上を目指す。全国には3~4万もの山城があるといわれている。歴史的価値とは別に、地域の宝としてそれぞれの地方の実情にあった公園づくりが望まれる。ふるさとの山を未来の子供たちへー。