地元岐阜県の工芸品である美濃和紙。美濃和紙は1300年前から存在し、書用や障子紙など日常生活で使用され、岐阜提灯、岐阜和傘、水うちわなど県内の他の工芸品にも使用されるなどとても重要なものである。しかし、近代に入り、洋紙の登場、生活スタイルの変化により和紙自体が日常から遠い存在になってしまっている。それに伴い和紙職人の数も減少し後継者不足も課題となっている。「需要が減っている美濃和紙の産業に対し自分にできることはないだろうか」そんな思いから今回の取り組みを行った。
美濃和紙に使用される原料の一つに楮がある。成長が早く毎年収穫され、美濃市内で栽培される楮を美濃楮という。和紙作りに使用されるのは楮の皮の内側の白皮と呼ばれる部分のみで、芯の部分は不要となる。「ガラ」と呼ばれる芯の部分は燃えやすい特性があり、細いものは囲炉裏、薪ストーブなどの着火剤として使用されているが、太いものは燃焼性が悪く着火剤としては不向きで、大量に発生するガラは利用方法がなく処分にも困っていた。ガラは非常に軽く、表面が滑らかで、太いものは強度もあり、処分するのはもったいないと感じアップサイクルの提案をテーマとして卒業制作に取り組んだ。
作品1:GARUP CHAIR
ガラを知ってもらうために、ガラのみで椅子を製作。ガラの特徴である、中心の穴や、滑らかな表面の質感を見て、触って、座って感じてもらうことができる作品として製作した。
接合は膠(にかわ)とダボで行い、美濃和紙同様に自然素材のみで製作。線素材をカーブ形状に並べ配置させることで柔らかな印象の椅子に仕上げた。
作品2:GARUP FOLDING CHAIR KIT
誰でも簡単に組み立てることができる折りたたみ椅子の組み立てキットを製作。自分で組み立てることでガラをより身近に感じてもらうことができる。組み立てた椅子はシンプルで非常に軽量のため持ち運びに便利であらゆるシーンで使用することができる。
座面のカラーを三色展開し、パッケージには各カラーの美濃和紙で製作したラベルを使用。
キットの組み立て手順を記した組立説明書を作成。
キットのリーフレットを作成し、MINO KOZO GARUP、KITの詳細を記載。紙は美濃和紙を使用しており、見るだけでなく触ることで表裏異なる美濃和紙の質感を楽しむことができる。
利用価値がなかったガラのアップサイクルプロダクトが、美濃和紙と共に日常のシーンで使われて身近なものとして感じてもらえるようにこれからも新たなアップサイクルプロダクトを考えていきたい。