カタチのない自然現象を感じることによって、日々の変化に気がつくきっかけをつくる。
風景の触覚的特徴に着目し、ふれて、光・風・雨・雪を感じる身近なプロダクトを制作した。
〈つらら〉日中の時間が徐々に長くなると、光は降り積もった雪を溶かし、日の陰りが戻した寒さで、つららに変える。
〈そよ風〉厳しい寒さが続いたあと、そよ風は隅々まであたたかさを運び、ふんわりと包み込む。地表では、福寿草が花ひらく。
〈雪どけ〉あたたかさが雪を溶かす。土は、雪どけ水を含み、光に照らされて、やわらかくなる。
〈桜雨〉雨は寒さをつれ戻し、満開の桜をふいに散らせる。残された木には、みずみずしさがある。
〈青嵐〉青葉の中を力強く吹きぬける風は、生い茂る一面の草たちを揺らし、一瞬に整列させる。
〈梅雨晴れ〉日当たりが、あじさいにたくさんの花をつける。あじさいの蕾は、雨を期待させ、一層晴れ間を際立たせる。
〈南風〉海から吹いてくる南風は、波をつくり砂浜までつれてくる。風の強弱が、波の強弱になり、凹凸の跡をつける。
〈熱帯夜〉夜に持ち越された暑さによって、草花は弱々しく倒れ込む。ねこじゃらしだけが、しなやかに、いきいきと存在を主張する。
〈台風〉強い風と雨が道端のものを吹き飛ばし、片隅にひっそりと、湿気を含んで葉がひらいたこけが現れる。
〈秋の長雨〉秋の長雨はまっすぐに降り続き、金木犀の花を真下に落とす。落ちた花は、木の形と同じ円形をつくる。
〈霜〉急激な寒さによって空気中の水蒸気が凍りつく。風のない快晴が、冷たい空気を停滞させ、霜を育てる。
〈新雪〉寒さがかるい雪をつくる。かるくやわらかい雪は、ゆっくりと時間をかけて降り、地上の木々を覆い隠す。