伝統こけしは高い認知度を誇る一方で、その魅力を知る人は一部に留まっている。私は、200年以上の歴史の中で人と自然によって育まれた美しいデザインを抽出したプロダクトを制作し、伝統こけしの新たな魅力を現代に発信したいと考えた。本作品によって、伝統こけしがより多くの人に愛されるようになり、産地である故郷の東北を豊かにしていきたい想いで制作に取り組んだ。
〈 卒業制作を振り返って 〉
伝統工芸品はその土地の風土を纏い、人々の生活に密接に関わり合いながら今日まで発展してきた。伝統こけしもまた、時代によって役割を変えながら今日に至る。その歴史を知ることで、自身が生まれ育った故郷についても理解を深めることができた。
卒業制作を通じて、私は東北に200年以上続く素晴らしいデザインと、それを現代まで紡いできたこけし工人に出会い、これこそが東北のたからものだと感じた。師匠から伝承された技を守り後世へと繋ぐ、実直な工人たちにスポットライトを当て、現代の人々にもその姿を伝えたいと、強く思った。工人でなければ蒐集家でもない、学生の目線から見つけた伝統こけしの魅力的なデザインによって、時代に寄り添った価値を創造したい。これからも伝統こけしが人々に長く愛されるきっかけを作り、伝統こけしの産地が活気を取り戻すきっかけとなることを心から願っている。