望月 公紀 / 建築デザインコース

建築のエピジェネティクス

望月 公紀 / 建築デザインコース
「エピジェネティクス」という言葉を知っているだろうか? 遺伝子工学の最先端の分野で、人の性質は後天的に変わりうることを遺伝子レベルで解明していく遺伝学である。

DNAとは生命の設計図であり、全体の約2%が遺伝情報を伝える機能、いわゆる「遺伝子」と呼ばれている部分である。遺伝子はいわば設計図のなかの、さらに詳細な説明図のようなものだ。

2003年にヒトゲノムが解読されて以来、両親から受け継いだ遺伝子は生涯変わらないとういう考え方が一般常識となったが、エピジェネティクスによれば、それがそうでもないようなのだ。DNAのうち「遺伝子」以外の残り約98%はジャンクDNAと名付けられ、その存在理由が解明されていなかったが、最先端の研究によって、そのガラクタ部分にこそ我々を形作る情報がふんだんに含まれていたことが解明されたのである。顔の形や体型、性格、病気の発現など、ありとあらゆる人のかたちや運命はこのDNAの情報によって決定されるというのである。

さらに驚くべきは、このDNAに2万種類ほどの「スイッチ」が発見され、そのスイッチのオンオフは外的な環境によってコントロールすることが可能だということだ。つまり、自らが身を置く環境によって、両親からさずかったDNAを書き換え、未来を、そして運命を変えることができることをエピジェネティクスは教えてくれたのだ。

自らの人生を変えようとこの大学に入学したみなさんのDNAは、厳しくも楽しく建築を学んだことによって、たしかに書き換えられています。建築するDNAとは何か? それはいかなる困難な状況におかれても、多角的に情報を分析し、複雑な問題にシンプルな解決策を与えてくれるものです。みなさんに埋め込まれたそのDNAは必ずやそれぞれの未来を切り開いてくれると信じてやみません。

このテキストをもって、新型コロナウィルス騒ぎで卒展や卒業式の延期を余儀なくされた卒業生の方々への門出のお祝いの言葉に、またWeb卒業制作展開催に向けたあいさつに代えさせて頂きたいと思います。

WEB卒業制作展に訪れた皆さんへ
ここに掲載された本年度の卒業制作は、このDNAを引き継いだ卒業生の努力の結集です。どうかじっくりとご覧ください!

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