• 岡山県最北の高原エリア、蒜山(ひるぜん)。観光と1次産業、2つの主産業をもつ地方リゾート地と観光の関係性を考える。
    日次=「毎日、日ごと、日々のこと」  次 =「宿次、泊まる場」の意(例:東海道五十三次)

  • 蒜山という地名は、日本で唯一この土地だけの名前。元は広大な軍馬養成場だった敷地と高原特性を生かし、蒜山大根・キャベツなどの高原野菜、山ぶとうワインといった農産物、ジャージー乳牛が名産として挙げられる。昭和後期から始まった高原リゾート開発の後、近年は高原景観を生かしたサイクリングロードの整備や、B級グルメの台頭もあり観光にも力を入れている。
    一方で、地域人口と観光客の減少という大きな課題も抱えている。

  • 2019年の夏と冬、10数年ぶりに蒜山を訪れた。
    そこで感じたのは季節ごとの「客足の差」と、「2回目(もしくは冬)でも楽しめる体験」の見つけにくさ。
    そして「特定の観光エリア内で完結し、地域との交流なく均一化された観光」にも疑問を感じた。

    「蒜山だけの時間」を捉え直し、見えやすくすることが現在の観光課題解決の一歩になると考え、蒜山の調査を開始。

  • 蒜山の地域課題には、観光と関わりが深いものが多い。地域と「物理的」にも「心理的」にも距離がある今の観光のあり方が、負のループを生んでいる。
    【負のループ】希薄な関係性→観光によって生活・労働力が消費される感覚→地域への興味関心の低下→
           若者の流出→ 農地の人手不足→元の観光資源(高原風景)の喪失

    一方、観光・地域課題双方の面での課題「冬」。実は昔の蒜山の人々は「厳しく長い冬ならではの過ごし方」を持ち、それが今の蒜山工芸・伝統を生んだとされる。過酷な冬の暮らし方こそが「蒜山時間」のDNAなのだ。
    そこで、「蒜山の冬の日々」をテーマに、地域と観光の新しい関係性を提案する場と仕組みを提示することとした。

  • 地域中央部の福田神社前の通りをエリアに設定。日常に隠れた蒜山風景を探しに、蒜山エリアを巡るための拠点でもある。

  • 地域との「物理的距離」を改善。地域コミュニティの中に、観光動線を組み込み、まずは交流の場作り。

  • 「魅せる作業場」をテーマに、エリア内の空き家をリノベーション。同じ場所に、違う用事で、いろんな関わり方の人が集まるよう、機能をエリア内各棟に分散させている。

  • 特色をもった「地域プレイヤー」ごとのプログラム。
    地域に住まう人を「先生」「パフォーマー」「チームメイト」として関わる、新しい関係を育む。「心理的距離」の改善。

  • 観光ゲストが、自分たちの感性で選んで組み立てるオリジナルの「蒜山時間」
    土地を知り、人と交わることで共感を生み、地域への愛着を育てる。

  • 「蒜山日次」のアイデンティティ「冬の日々」を表すデザインのアイテム。ゲストがお気に入りの蒜山の日常を見つけるサポートをし、自発的な体験を促す。アイテムの利用は観光ゲストの体験を豊かにするだけでなく、蒜山の観光資源「高原風景」を守ることにつながる。アイテムが、地域理解を深める入り口にもなる。

蒜山日次プロジェクト
八名 彩香